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日本橋形成外科

粉瘤・アテローム・アテローマ

■粉瘤・アテローム・アテローマ

粉瘤・アテローム・アテローマ(Epidermal cyst・Atheroma)とは

良性の皮下腫瘍です。よく「脂肪の塊」といわれますが、脂肪とは全く関係ありません。外観はドーム状のふくらみを有します。中心部に臍のような凹みがあることが多く、そこの穴から発酵した様な独特の臭いが出ることもあります。また臍には「へそのゴマ」のようにコメドといわれる角栓も見られることがあります。
粉瘤は、皮膚から自然に剥がれ落ちるはずの垢や皮脂が皮内や皮下に溜まり、皮下に袋状のできものを形成します。この袋状のできものは一度できてしまったら、袋ごと完全に体外にとり出さないとなくなりません。中途半端な手術を行い、袋の破片が一片でも残るとまた再発します。あるクリニックはくりぬきと称して中身のみを絞り出して、なんとなく嚢腫壁をひっぱって、5分で「はい!おしまい!」という所もあるようですが、それは摘出ではなく切開排膿のような?気もします(もちろん再発します)。 また袋の内容物があまりきれいなものではないため、しばしば炎症をおこし真っ赤に腫れて痛くなることがあります。その場合は、一度膿をだし炎症が落ちついてから摘出術をおこないます。

粉瘤の簡略した図

実際の摘出した粉瘤


【原因】

個別の発生原因はわからないことが多いのですが、外傷やニキビのあとに皮膚が硬くなり皮脂腺から皮脂が体外に出ずに発生する場合や、そもそも皮脂腺が多く、粉瘤が発生しやすい体質である場合、また外陰部に多いのですが歩行などでこすれて、皮脂腺の外口部がつぶれて発生する場合などが考えられます。

【粉瘤で気を付けなければならないこと】
・繰り返す炎症による有棘細胞癌

かなり稀ですが炎症や、化膿を繰り返すことで粉瘤の袋の壁から皮膚癌が発生することもあります


・繰り返す感染により皮膚癌が発症した例

一部生検後、病理結果は有棘細胞癌。その後、拡大切除した症例です。

【診断】

ほとんどの症例で、触診、エコーで診断がつきます。深部に達している場合(エコーで届かない)、または大きなものの場合はMRI精査を行い場合もあります。


・エコー所見
粉瘤のエコー所見の特徴として滑らかな円形、楕円形をしめし、一層の高エコーな被膜が明瞭で内部は不均一、低エコーで微細な点状を呈し、底面、後方エコーの増強がみられます。被膜を有し境界明瞭で平滑です。外部との連続を一部に認めることがあります。
【粉瘤治療】

■標準的手術法

術前写真:半球状に隆起した粉瘤をみとめます。

デザイン:コメドを中心に紡錐形にデザインします。

局所麻酔:細い針でゆっくり注入していきます。

切開:15番メスにて切開を加えます。

剥離:口蓋裂剪刀を用いて丁寧に剥離していきます。

被膜:粉瘤の被膜です。線維成分が多く境界が明瞭です。

剥離2:切開口が狭いため引っ張りながら剥離を続けます。

剥離3:底部も残さずきれいに摘出していきます。

摘出物です。

皮下縫合:吸収糸(半年~1年程度で加水分解されます:高級糸を用いています)にて丁寧に縫合します。

皮下縫合でこの状態まできれいに縫合します。

皮膚縫合:さらに細い糸で仕上げ縫いをおこないます。

手術終了です。

■くりぬき法

一般的に誤解されていますが、くりぬき法に高度の技術は必要ありません。ただデルマパンチを用いて穴をあけ、その穴から可及的に袋を摘出します。周囲が癒着している場合、感染している場合、粉瘤が大きい場合などは、標準的治療法と比較して袋が残存する可能性が高く、再発率も高いです。また腫瘍の底面が「つるっ」ととれるケースは良いですが(「つるっ」と取れるかどうかはある程度術前に予測できますが、実際は開けてみないとわからないこともあります)、腫瘍と周囲の癒着が強い場合、くりぬき法は直視下での操作ではないため、神経など重要臓器の損傷をおこすリスクも上がります。その旨ご理解いただき、希望される方の場合はくりぬき法も施術可能です。

術前写真:半球状に隆起した粉瘤をみとめます。

デザイン1:腫瘍の範囲をマーキングします。

デザイン2:コメド(粉瘤のでき始め)をマークします。コメドを含め摘出しないと必ず再発します。(コメドがわかりづらい症例もあります)

局所麻酔1:細い針でゆっくり注入していきます。

局所麻酔2:コメドを中心に注入していきます。

切開:デルマパンチにてコメドを含めて切開を加えます。コメドを含め皮膚摘出しないと再発します。

圧出:内容物を絞り出します。周囲が不潔になります。

剥離:残存している皮膜を可及的に剥離していきます。

剥離2:入口周囲に線維が豊富なため細部鑷子、口蓋裂剪刃を用いて丁寧に剥離します。

剥離3:摘み上げ、押し出すように取り出していきます。

剥離4:この症例は底面が「つるっ」と取り出せたのできれいに剥離できましたが、癒着している症例の場合は、袋がちぎれ残存するため再発します。

剥離5:丁寧に鈍的剥離、バイポーラにて止血しながら摘出します。

皮下縫合:吸収糸(半年~1年程度で加水分解されます:高級糸を用いています)にて丁寧に縫合します。
内容物が膿んでいた場合、縫合しても皮下で感染が広がってしまうため、縫合せず、開放創としておく場合もあります。その場合は傷が落ち着きまで数週間排膿をみとめることもあります。

皮下縫合でこの状態まできれいに縫合します。

皮膚縫合:さらに細い糸で仕上げ縫いをおこないます。

手術終了です。

■くりぬき法の適応にならない症例

①過去に感染を起こし周囲と癒着している場合
感染をおこすと周囲と癒着します。一部でも被膜を残すと必ず再発します。
②再発を繰り返している場合
再発を繰り返してアリの巣状に広がっている場合、穴が小さいくりぬき法だと取りきれない場合があります。
③顔面部など陥凹よりも直線状の傷の方が、最終的に傷が目立ちづらいと判断した場合
④感染している場合
すべて取りきれず必ず再発します。

<標準的治療法とくりぬき法>

※横にスクロールします

標準的治療法 くりぬき法

※いずれも肥厚性瘢痕・ケロイドなどを発症した場合は術後に治療が必要
直線状の傷 縫合しない場合は4~5mm程度の陥凹
再発の可能性 直視下で完全に被膜ごときれい取りきれた場合はほぼゼロ 小さいものは問題ないが、ある程度の大きさで、炎症後の癒着などがあると引っ張り出している途中で被膜がちぎれてしまう。その場合、奥のほうの被膜がすべて取りきれているかどうか完全には目視できない。一片でも被膜を残すと必ず再発することから、標準的な治療法よりは再発率は上がる事が多い
難易度 形成外科における基本的手技ではあるが専門的縫合技術が必要 デルマパンチで穴をあけなんとなく被膜を引っ張り出すだけであれば容易だが、ある程度しっかり取るのであればそれなりの準備と手術設備が必要
所要時間 30分~60分程度
できものを丁寧に剥離し、縫合するため手間がかかる
5分~10分程度
炎症・再発を繰り返すなど複雑な形状、または周囲の癒着などが予想される症例 適応 不適応
その他
  • 胸部、肩部などケロイド好発部位では穴を開けっ放しではなく、縫合したほうが良い
  • 顔面の陥凹は直線の傷よりも目立つこともある
  • デルマパンチで皮膚に穴をあけ、内容物を押し出すため創周囲が不潔になる
【感染性粉瘤/炎症をともなった粉瘤:Infected Epidermal Cystとは】

診断:ほとんどの症例で、視診、触診、エコーで診断がつきます。

・エコー所見
炎症が強く膿の多いものだと腫瘍内部に液体成分と思われる無エコーの部分を認めることもあります。また被膜がみとめられず、境界が不明瞭な場合もあります。
感染性粉瘤の治療
感染性粉瘤の場合、標準的治療法はまずは切開排膿を行い、炎症が落ち着いてから摘出術をおこないます。感染しているときに摘出術をおこなってはいけません。 その理由は、①感染部を含め完全に摘出しようとすると最終的に大きな傷になってしまう。②感染部の範囲内で摘出を試みても被膜が炎症で溶けているため完全には摘出できず必ず再発するため。③炎症を起こしていると、正常組織と腫瘍との境界が不明瞭で神経などの重要組織を損傷してしまう可能性が高まるため。

以下に症例を提示します。

術前写真:感染性粉瘤です。いわゆる感染の4徴:熱感・発赤・疼痛・腫脹を認めます。

局所麻酔:細い針でゆっくり注入していきます。

切開:コメドが分かれば、コメドを通るように切開をおこないます。

排膿1:ドロドロに溶けて膿んだ内容物を認めます。悪臭があります。

排膿2:圧出して内容物を出します。この状態で被膜がわかりますでしょうか?まずわかりませんし、取れたとしても一部です。被膜が残存すると必ず再発します。摘出術と称してもそれは感染している場合は切開排膿にすぎません。炎症を起こしている場合はまずは切開排膿、炎症が落ち着いてから摘出術となります。

排膿3:内容物を圧出し終わった状態です。数日間は排膿があります。

排膿4:洗浄処置をおこないます。

切開排膿終了:圧迫ガーゼを行い終了です。創部にカーゼを詰め込む先生もいますが(カーゼ交換の時にすごく痛いです)、当院では基本的には行いません。

切開排膿後 1ケ月後
術前写真:一部不良肉芽が上皮化した部分を認めますが、感染(熱感、発赤、疼痛、腫脹)を認めません。また炎症が落ち着いたことで、腫瘍の長径が一回り小さくなります。腫脹が治まり、小さくなりきった後に摘出術を行ったほうが最終的な傷が短くてすみます。

デザイン:コメド(粉瘤のでき始め)を含め紡錘形にデザインします。

局所麻酔:細い針でゆっくり注入していきます。

切開:15番メスにて切開を加えます。

剥離:バイポーラにて止血を行いながら丁寧に剥離をします。

剥離2:底面もきれいです。残存はありません。

止血:丁寧に止血を行います。

摘出物です。腫瘍周囲が瘢痕化を起こしています。くりぬき法ではとれません。

洗浄:洗浄処置をおこないます。出血の有無をもう一度確認します。

皮下縫合:吸収糸(半年~1年程度で加水分解されます:高級糸を用いています)にて丁寧に縫合します。

皮下縫合でこの状態まできれいに縫合します。

皮膚縫合:さらに細い糸で仕上げ縫いをおこないます。この症例では周囲の癒着が強かったため、ドレーンを挿入しています(翌日抜去します)。

手術終了です。

症例2
切開排膿後1ケ月後の症例です。

術前写真:粉瘤の内容物が一部露出し、周囲が瘢痕化をおこしています。周囲の瘢痕組織ごとの摘出が必要です。くりぬき法はできません。

デザイン:周囲の瘢痕ごと摘出するように紡錘形にデザインします。

局所麻酔:ゆっくり注入していきます。

切開:15番メスにて切開をくわえていきます。

剥離:粉瘤の周囲を剥離していきます。被膜が透けて見えます。

剥離2:止血を行いながら剥離を進めていきます。

摘出物です。

皮下縫合:吸収糸(半年~1年程度で加水分解されます:高級糸を用いています)にて丁寧に縫合します。

皮下縫合でこの状態まできれいに縫合します。

皮膚縫合:さらに細い糸で仕上げ縫いをおこないます。

手術終了です。

症例集

右頬の粉瘤

左耳の粉瘤

被膜ごときれいにとらないと再発します。

下顎部の粉瘤

被膜ごときれいにとれています。シワの線にそって7-0ナイロンというかなり細い糸できれいに縫合しています。

下顎部の粉瘤

複雑な形状をした粉瘤です。一部でも残すと必ず再発してしまいます。きれいに取りきれています。縫合も丁寧です。

左下眼瞼の粉瘤

小さい粉瘤もきれいに取れます。縫合は7-0ナイロンの極細の糸で縫合しています。 鼻部の粉瘤

鼻部の粉瘤

比較的めずらしい場所にできた粉瘤です。摘出後も傷はあまり目立ちません。

顔面の粉瘤

小さいものも丁寧に手術をおこなえば、きれいに取れます。細かく縫合した方が仕上がりもきれいです。

臀部の粉瘤

かなり大きい粉瘤です。皮膚がパンパンに張り、今にも張り裂けそうです。炎症があるときれいにとれません。完全に摘出しています。

臀部の粉瘤

肛門部に近い場合は痔瘻との鑑別が必要です。きれいに取りきれています。

後頭部の粉瘤

毛流を考慮して切除しています。毛髪が上から被さり傷が目立ちません。


【当院で治療を受けるメリット】
・豊富な症例経験

形成外科の中では日本で最も大きな医局である昭和大学形成外科教室出身の形成外科専門医を中心に、第一線で活躍してきた医師による標準治療に合致した安全な治療が受けることができます。数多くの経験から個々にあった、最適な治療法を提示できます

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・清潔でクリーンな環境
・アクセスしやすい立地

平日は曜日によっては夜19時30分までの受け付け可能です。

医院名 日本橋形成外科・皮フ科・美容外科
住所 〒103-0023
東京都中央区日本橋本町2-4-12 イズミビルディング2F
電話番号 03-6825-1712
開設者 院長 網倉良安
診療時間

月水木金 10:00~14:00 15:00~19:00(最終受付18時45分)
土日祝 10:00~15:00(最終受付時間14時30分)

※火曜日は休診日となります。

※最終予約受付は診療内容によって異なりますので、電話・メールなどで確認して下さい。

※完全予約制です。急患はこの限りではありませんが、できれば事前にご連絡下さい。

三越前駅が近隣の駅となります。
コレド室町1・コレド室町2の並びで、江戸桜通り沿いにあります。
イズミビル2F (日本橋本町2-4-12 )が当院となります。

4.その他の腫瘍については

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